WORKS 作品
INTERVIEWインタビュー
高島夏来
アートとの出会いについて教えてください。
父が東京藝術大学の油画科出身で、家には画材がたくさんありました。
その影響で、幼い頃から絵を描いたり工作をしたりすることが、自然と生活の中にありました。
絵だけでなく、粘土や手芸、ビーズ細工にも夢中になりました。テディベアを小さいものから大きいものまで作ったり、ビーズにハマると毎日のように何かを作っていたり。凝り性なところがあって、一度好きになると長く続けるタイプだったと思います。
高校は美術コースのある学校に進み、大学では多摩美術大学のグラフィックデザイン学科へ。何かしらクリエイティブな仕事に就くのだろうとは思っていましたが、大学で映像制作に出会い、映像の道に進むことを選びました。現在も本業は映像ディレクターで、企業CMをはじめとした映像制作に携わっています。
絵を再び描き始めたきっかけは何だったのでしょうか。
映像の仕事を始めてからは、絵を描くことをぱったりやめていました。十数年ほど描いていなかったのですが、コロナ禍で仕事が一時的に減り、時間ができたんです。その時に、もう一度、自分がもともと好きだった絵を描くことや、手を動かして何かを作ることに戻りたいと思いました。
ただ、再開するにあたって、自分らしいテーマがあった方がいいと感じました。そこで思い出したのが、昔から続けていた夢のメモです。変な夢や不思議な夢を見ると、忘れないように書き留めていました。そのメモを引っ張り出して、これを作品の軸にしようと思ったのが、現在の制作につながっています。
夢は毎回面白いわけではなく、現実的な夢ばかり見る時期もあります。それでも、これは作品になりそうだと思う夢を見た時には、できるだけ忘れずに記録し、そこから要素を抽出して絵にしています。
「スモークホテル」
作:高島夏来
夢をどのように作品にしていますか。
夢は実写の映像として見ているので、そこから一番印象に残ったシーンや面白い要素だけを取り出して、自分のテイストで一枚の絵に落とし込んでいます。
大切にしているのは、その夢を見た時に自分が感じた印象です。怖かったのか、奇妙だったのか、少し笑えるものだったのか。そうした感覚が、できるだけ画面に残るように意識しています。
デザインを学んだ経験は、要素を抽出して画面の中で再構成することに生きていると思います。一方で、映像の仕事とは逆のことをしている感覚もあります。映像は時間の流れで見せるものですが、絵では長いストーリーを一枚の画面に収めなければなりません。だからこそ、どの瞬間を切り取るか、何を残すかを考えるのが面白いです。
個展に来てくださった方から、これを映像で見てみたいと言われることもあります。でも、普段は映像の仕事をしているからこそ、今は一枚の絵に定着させることに魅力を感じています。
「ロケハンロケ」
作:高島夏来
自分にとって印象に残っている作品を教えてください。
「ランナー」という作品は、個展を開くたびに欲しいと言っていただくことが多かった作品です。プールの中から空を見上げると、ランナーが空を走っているという夢をもとに描きました。場所はヨーロッパのようなブラジルのような…どこかの国で、見た時に感じた「外国」の印象をパステルカラーで表現しました。
最近、手描きの作品にも取り組み始めました。これまではiPadで描いたものをキャンバスプリントしていましたが、手描きにすると一点だけの作品になります。その分、かける時間も熱量もまったく違い、完成した時の達成感も大きいです。
一方で、手描きにしたことで制作スピードは大きく落ちました。仕事や子育ての合間に制作しているため、画材を出し、筆を洗い、まとまった時間を確保することは簡単ではありません。それでも、粘土を使って半立体にしてみるなど、新しい表現を少しずつ試しているところです。
「ランナー」
作:高島夏来
制作で大切にしていることは何ですか。
こんな夢は高島しか見ないよね、と思ってもらえるような視点は大切にしています。少しヘンテコで、見た人に小さなサプライズを与えられるような作品にしたいんです。
夢の中の出来事をどう構成すれば、見る人が面白いと感じてくれるのか。構図や配色を考える時も、受け手のことは自然と意識しています。
これは映像制作にも通じる感覚です。見る人は、貴重な自分の時間を使って見てくれます。見終わった後につまらなかったと思わせたくない。絵も同じで、見てくれた人が少しクスッとしたり、こんな夢を見ているんだと面白がってくれたり、少しでも明るい気持ちになってくれたら嬉しいです。
「狙うは、キミ」
作:高島夏来
最後に、今後の展望・目標を教えてください。
まずは、できる限り続けていくことが目標です。続ける中で、自分の表現を少しずつアップデートしながら模索していきたいです。
もちろん、多くの人に知ってもらい、作品を部屋に飾ってもらえたら嬉しいです。ただ、それを大きな目標にしすぎると、自分が苦しくなってしまう気もしています。だからこそ、まずは楽しく、長く続けることを大切にしたいです。
創作が義務になってしまうと、仕事と同じになってしまう。自分にとって絵を描くことが、ちゃんと息抜きであり続けること。その中で、見てくれた人の心に小さな驚きや楽しさを届けられたらと思っています。
夢の中で見た不思議な出来事を、デザインの視点で再構成し、一枚の絵へと昇華する高島氏。映像の世界で培った受け手へのまなざしと、幼い頃から続くものづくりへの純粋な喜びが、作品に独自の物語性をもたらしている。これからどんな夢が、どんな形で画面に現れるのか。その歩みは、静かに、しかし確かに広がっていく。