主に、日本画材を用いて制作をしています。
《日常の中の桃源郷》
猫や子どもの無垢で愛らしい存在や、路傍の草花などありふれた存在をモチーフにし、そこに桃源郷のような安らぎ・懐かしさ・憧憬を感じる日常の光景を絵として描きたいと日々模索しています。
《眠り猫を描くこと》
現在は、主に飼い猫を多く題材にしてますが、その中でも眠る猫に重きをおいています。
なぜ《眠る猫》なのか。
我が家の猫の寝相が格段に悪く、それが滑稽で、歌川国芳の猫のように洒落ていたのもありますが、白雪姫のように綺麗に眠る姿でなく、無防備な寝姿からは、生き生きとした生命力を感じ、そのありのままの姿に憧れを覚えます。
《技法について》
日常の中にある光景を桃源郷の様な安らぎの空間として表現するうえで、《淡く光に満ちた色彩》を大切にしています。
岩絵具の「白」や「13番」といった粉のように細かい粒子で明るく淡い絵具を使用し、
それを薄く重ねることで、味わい深い色彩と、淡い色彩の光に満たされた画面を作り上げています。
【略歴】
1986年
・三重県生まれ
2011年
・広島市立大学芸術学部日本画学科卒業
2013年
・広島市立大学大学院芸術学研究科博士前期課程修了
【入賞歴】
2014年
・第14回芸美会(同'15〜18年、20〜23年/福屋八丁堀 広島)
2016年
・「Flag of the west 」(同'18、22年/Gallery G 広島)
2021年
・第16回津市美術展覧会日本画部門 津市長賞
2022年
・第17回津市美術展覧会日本画部門 津市教育員会教育長賞
2024年
・美術新人賞デビュー展入選
WORKS 作品
INTERVIEWインタビュー
岡本望
簡単に自己紹介をお願いいたします。
三重県出身で、現在は千葉県で日本画の制作を行っています。広島市立大学日本画学科出身ですが、卒業後は一般企業に就職したため、作家としての活動歴はほとんどなく、公募展に出品したり個人で展示等活動し始めたのはここ4〜5年ほどになります。
現在は主に猫を題材に作品を制作しています。特に、猫の持つ柔らかな体躯を生かしたポーズや愛らしさを感じる表情をモチーフにし、見る人に安らぎや面白さを与えられるような作品を心がけて、日々制作に取り組んでいます。
「秋に舞う」
作:岡本望
印象に残っている展覧会や出来事はありますか?
印象に残っている展覧会は、2021年に開催された津市美術展覧会です。この展覧会は、数年ぶりに自らの意思で挑戦した公募展であり、最優秀賞(市長賞)を頂いたこともあり、とても思い出深い展覧会です。
現在、多くの作品で猫を描いていますが、この展覧会で発表した作品は、猫をモチーフとして初めて手がけた日本画でもありました。そのため、この経験が現在の制作の出発点となっており、自身の表現の方向性を決定づけた重要な出来事だったと感じています。
「華胥の夢」
作:岡本望
画家活動を始めたきっかけは何ですか?
美術大学で日本画を学びましたが、在学中に自分の絵にだんだんと自信をなくしてしまい、卒業後は絵とは関係のない一般企業に就職する道を選びました。それでも自分のやってきたことを無かったことにはしたくないという気持ちから、年に1〜2枚ほどではありますが絵を描き続けていました。描いてはいましたが、いわゆる画家活動とはほど遠い生活を長く続けていました。
そんな折、出産を経験し、母親として、また一人の人間として、子供に誇れるものや夢中で何かを追い求める姿を見せたいという思いが沸き上がったことをきっかけに、私の人生の一部であった絵しかないと改めて実感しました。その想いをきっかけに公募展にチャレンジし、ありがたいことに賞をもらえたことで、再び画家として今一度歩む勇気が湧きました。その後は、子育てや仕事と両立しながらではありますが、作品発表や公募展への挑戦を続けています。
作品にはどのような想いを込めていますか?
小さい頃から絵の原動力は憧れでした。欲しいものが手に入らないときにはそれを描き、理想の世界を空想しては描くことで、自分なりにその憧れに触れようとしてきました。現在、多く描いている猫も制作の原点である憧れから導かれた存在です。
猫を描くようになったきっかけは、コロナ・子育て・仕事が重なり心身ともに疲れ切っていた時期にあります。何食わぬ顔でお腹をさらけ出し、無防備に眠る猫の姿に強い憧れ。ある種の羨ましさを抱いたことが始まりでした。その絵を見た方からは、穏やかに寝る猫の仕草に癒される、穏やかな世界観が魅力に感じるなどの言葉をいただくことができました。憧れという感情は、人の心を揺さぶり、理想を映し出す鏡のようなものであり、非常に魅力的なものだと感じています。
また、現代のSNSやネット社会は共感や理想が求められる時代でもあると思います。だからこそ、自分自身が心から惹かれる題材と向き合い、その中にある感情を丁寧にすくい取りながら、見る人にとっても心惹かれる世界として感じてもらえるような作品づくりを心がけています。
今までの作品で最も「自分らしい!」と思う作品があれば教えてください。
恥ずかしながら、その時々で心惹かれたものを素直に描いてしまうため、作風やモチーフ、表現が大きく変わるタイプです。そのため「最も自分らしい作品はどれか」と問われると、どの時期の作品が本当の意味で自分らしいのか、正直なところ断言することができません。
ただ、その時に強く惹かれた技法・モチーフ・表現・思想をもって描いた作品こそが、その瞬間における最も自分らしい作品であると感じています。その表現の変化こそが私の作家としての歩みであり、自分らしさでもあると思います。
今後の作品制作に向けての想いをお聞かせいただけますか?
現在は猫や身近なモチーフを組合わせて写実的(現実的な世界)を軸に制作しています。ただ、その根底にあるのは、幼い頃から変わらない憧れであり、どこかにあるはずの幻想の世界。いわば理想郷のようなものです。そうした世界こそが、自分が本来描きたい主題なのではないかと感じています。今後は猫や身近なものをモチーフとしつつも、その世界観を日本画を通して昇華していきたいと考えています。
その一つとして、日本画(日本美術)は抽象的かつ誇張的景観・空間、幻獣、模様といったデザインやキャラクター性を通して、非現実的な世界の表現を得意としていると考えています。そうした幻想的な空間を演出する日本画の系譜として琳派の表現や漫画表現なども手がかりにしながら、憧れの世界である理想郷が描けないかと模索しています。
現代に生きる日本画作家として、現代の人々と共感できる理想の世界観を追求し、鑑賞者に安らぎや想像力を沸き立たせるような作家となるよう邁進していきたいと思います。
「極楽な猫」
作:岡本望
自身の内面にある憧れと誠実に向き合いながら、表現を更新し続ける岡本望氏。作風の変化さえも自らの歩みとして受け止める姿勢は、これからの展開に大きな可能性を感じさせる。身近なモチーフから広がるその世界が、どのように理想郷へと昇華されていくのか。今後の表現の深化に注目したい。
EXHIBITIONS 展覧会情報
2025.10.01 - 2025.10.15
岡本望Web個展 猫眼譚~瞳の先の桃源郷~
私にとって絵を描く(創造する)行為は、憧れ(夢)を追い続けることと思っています。
自分自身がなりたいもの、住みたい家、宇宙の果てといった夢物語の世界を幼少期は白い紙に描いたり想像していました。
現在の制作にも、夢物語の世界として、「桃源郷」をひとつのテーマで描くことが私の絵の根底にあります。
そもそも桃源郷とは、陶淵明の「桃花源記」に描かれた俗世から離れ、桃の花の咲く山奥で平和で穏やか過ごす人々がいる世界が由来です。
今回「猫」と「桃源郷」をテーマにしていますが、一見、繋がりがないように感じるかと思います。 しかし、猫(特に飼い猫)の生活を見ていると、毎日、好きなだけ寝て、食べて、人間に媚びず気ままに生活をしており、その何事にも縛られない、穏やかでゆったりとした猫の佇まいに、桃源郷に近いものがあると感じています。
また、桃源郷は、結局この世に生きている限り辿り着けない場所です。猫の生活に憧れること自体も、桃源郷に思いを馳せることと似ているとも感じます。
俗世から離れ、穏やかに時間が流れる桃源郷を、猫の姿、眼差しから感じていただきき、また猫そのものの愛らしさも感じていただき、心が穏やかな気持ちになっていただけたら幸いです。