Interview注目の作家

ミクストメディア
喜多隴
教師としての経験を経て、人生の転機となった出来事をきっかけに画家の道へ進んだ喜多隴氏。記憶や自然、身近な風景を重ね合わせながら生まれる作品には、静かな透明感と確かな調和が宿る。本インタビューでは、その創作の原点と現在地に迫る。
画家の道に進む決断をした経緯を教えて下さい。

高校を卒業するときに、大学に進学するのか就職するのかと進路を悩んだ時期がありました。そのときは画家になるという選択をして飛び込んでいく勇気がなかったんです。自分にはどうしても持てませんでした。

教師などをして生きてきたとき、東日本大震災があり、人や自然のことを色々考えるきっかけになりました。そこで画家の道へ進むことに決めたんです。たくさんの人と出会うなかで自分の作品をそのまま認めてくれる人もいましたし、もっとこうしたらっていうアップデートに自分が傾いた時期もありました。

教師を辞めてから画家に専念して以来、後悔したことは一度もありません。絵を描くことで多くの人に出会って、たくさんの喜びをいただきました。いまはそれらに感謝をし、恩返しをしていきたいと考えています。

「キックトントン」 作:喜多隴
これまでの作家名から新しい作家名「喜多隴」として新しく活動を始めるきっかけは何だったのでしょうか?

作っていくものには悩んだのですが、自分が長くずっとやってきたものを離れるのも勇気がいることで。そこでこれまでの活動とは別の名前で喜多隴という活動を始めて、ファインアートの制作を始めました。絵を描くことが楽しくて仕方がないので、新しいジャンルの作品もトライしてみたくなったんです。

作品のモチーフやインスピレーションはどこから得ていますか?

基本的に個人的な記憶を描いています。それは自分の経験したことだったり、犬と一緒に散歩したなかで見た景色であったり、自然の美しさに感動したことだったり。基本的に自分の記憶を取り巻いている身近な生き物や自然、植物、形のあるものないものを何度も重ねていって、作品として仕上げます。


ファインアートを制作する際はとくに、美しい透明感があるかとか、全体が調和してきるかということを気をつけています。大事にしたいのは自分の記憶のなかにいつも北海道の美しい風景があるということです。北海道の景色への気持ちを込めたいなと思ってます。

「ばら」 作:喜多隴
作品に描かれたバラの花について、どのような思いやエピソードがあるのですか?

最初にバラの花を描いたときのことです。友達のおうちに遊びに行ったときにいただいたお花がかわいかったので、作品のモチーフに仕上げてみました。お庭で育てていた赤いバラを切って、包んで持たせてくれたんです。いつもとても気遣いをしてくれる大切な友達を思いながら、お花に込めたやさしさや、その日の楽しい時間などを思い出しながら作品にしています。

ちょっと柔らかい感じのイメージをしています。そのために、作品で描いているのは真っ赤なバラではありません。すこし温かみのある色をしているお花に工夫しています。

「ピリカとゆめ」 作:喜多隴
動物を描くとき、構図やテーマで意識していることはありますか?

動物を描くとき、人物を登場させるときには、あまり難しくない構成にしてテーマをなるべくシンプルに描くということを心がけています。高梨美幸の絵が複雑で難しいので、そちらとの対比の意味もありますね。もっとシンプルにこういうことを書きたいっていうものをそのまま描くっていうことに、美しさが現れるかなと思ってきます。美しくない仕上がりは嫌なんですよね。シンプルななかでの美しさを追求することを忘れずに、今後と制作を続けてまいります。

個人の記憶や北海道の風景への想いを大切にしながら、シンプルで美しい表現を追求し続ける喜多隴氏。新たな作家名のもと、ジャンルの枠を越えた挑戦も始まっている。これからどのような世界を描き出していくのか、今後の活躍に大きな期待が寄せられる。

インタビュー: 2025/09/01