Interview注目の作家

ペン・鉛筆・色鉛筆画
TOMOKO
静岡県出身のアーティストTOMOKO氏は、人生の大きな転機を経て、自分自身と向き合うなかで絵を描き始めた。思考を手放し、手の動きにすべてを委ねる自動書記的な制作によって生まれる作品は、見る人それぞれの感情にそっと寄り添う。「幸福感や癒しを届けたい」という想いを金色の線に託し、展示を重ねながら表現を深化させてきたTOMOKO氏が、創作の原点とこれからの挑戦について語る。
絵を描き始めたきっかけを教えてください。

実は、最初から絵を描こうと思っていたわけではなく、むしろ当時の自分にとっては選択肢の一つですらありませんでした。ただ、曽祖父が絵を描いていたり、父が大のアート好きで家に絵画を飾っていたりと、幼い頃から自然と絵に触れる機会は多かったと思います。

そんな中、当時たまたま足を運んだアメリカの画家グランマ・モーゼスの展示会で、彼女が75歳から画家として活動を始めたことを知りました。その瞬間、点と点がつながるような感覚があり、そこから自分も描いてみようと思うようになりました。

描き始めた当初はまったく自信がなく、ただひたすら描き続けているだけでしたが、打ち込むうちに、次第に楽しいと感じられるようになっていきました。

絵を描くことがご自身の中で必要になった瞬間は、どんなタイミングだったのでしょうか?

当時のことを振り返れば、自分には何も無いという気持ちでした。離婚を経験し、子どもだけは責任を持って育て上げなきゃと思う一方で、正直もう人生終わっていいやと思っていたのも事実です。何かをしようとか、人と関わろうという気力が湧いて来ない時期でした。

そんな中で、周囲で支えてくれる人の存在に救われたり、精神世界を学んだりしているうちに、もっと自分を好きになって楽しく人生を終えたい。そのためには、自分と向き合わなければならないという気持ちが湧いてきました。

私にとっての”自分と向き合う”ということは、”私は本当は何をしたいんだろう”と考えることでした。紆余曲折しながらその答えを探る中で、最終的に絵を描くことに辿り着きました。

「金華の祝祭」 作:TOMOKO
今の表現にたどり着いたプロセスを教えてください。

描き始めた当初は、何を描きたいのかも分かりませんでした。描こうと決めても、技術を学んだ経験がなかったため思い通りに描けず、楽しさを感じられない時期もありました。

それでも100枚ぐらいまでは続けようと決め続けていくうちに、頭で考えるよりも心の赴くままに手を動かしたほうが描けることに気づきました。いわゆる自動書記的な描き方です。そうして生まれた作品を見て、良いかもしれないと思えたことで、このスタイルが自分の表現として定着していきました。

今も特定のモチーフを決めることはなく、手が自然に動くのに身を委ねて描いています。完成した作品を見た方からは、鳳凰や草花のように見えると言われることもありますが、制作中は何もイメージせずただ描くことに集中しています。

金色を使う理由には、何か意図はありますか?

金色を使うようになったのは”波動が高い色”だと聞いたことがきっかけです。試しに使ってみたところ不思議としっくりきたので今も使い続けています。また、私は自身の作品の中で光の波動を描いている感覚がずっとありました。光とはエネルギーそのもの、金色は豊かさや自信を象徴するもの、と言われているので、金色がしっくりきたのかなと感じています。「作品を通して見る人にポジティブなエネルギーを届けたい」─そうした思いから、金色には特別なこだわりを持って制作しています。

絵を描いている最中はとてもリラックスした状態です。描き進めるうちにどんどん素敵になっていくなと感じられる瞬間があり、その感覚が純粋な楽しさにつながっています。それに制作中に緊張感や負の感情はほとんど感じません。こうしたリラクス状態で描くからこそ、作品の中に光やエネルギーのようなものが自然と立ち上がってくるのだと思っています。

「輝」 作:TOMOKO
展示会を開催した際に鑑賞者の反応で印象的だった出来事はありますか?

一番印象に残っているのは「一目惚れしました」と言われたときですね。とても嬉しかったのと同時に、そのように感じてくれる人がいることに驚きもありました。

というのも、活動を始めた最初の一年間は、まったく自信がなかったからです。Instagramに作品を投稿することさえ怖く、自分の存在を知られたくないとさえ思っていて、もうやめてしまおうかと考えたこともあります。

それでも少しずつ、Instagramを通じて展示会のお誘いをいただくようになり、同時に作品を褒めていただく機会も増えていきました。「これは誰にでもできることじゃないですよ」と言われたとき、はじめて「ああ、これが自分の強みなのかもしれない」と思えるようになりました。

創作を通じて、鑑賞者にどんな変化が生まれたら嬉しいですか?

私の作品が誰かの癒しになれば嬉しいです。自分自身、つらい時期を経験してきたからこそ、同じように苦しさを抱えている人にも、そっと寄り添える存在でありたいと思っています。作品を通して少しでも心が軽くなり、前を向くきっかけになったり、日常の中で元気を取り戻す時間につながったら——そんな願いを込めてこれからも制作を続けていきたいです。

今後、挑戦してみたい表現はありますか?

もっと大きな作品に挑戦してみたいです。最近の展示では10号サイズを出すこともありますが、普段はA4程度のサイズで描くことが多く、支持体についてもこれまでの紙作品に限らず、壁画など空間と関わる表現にも挑戦してみたいと考えています。

また、ライブペインティングにも憧れがあります。大きな紙に身体全体を使って描くことは、自分の自動書記的なスタイルとも相性が良いのではないかと感じていて、実際に近々挑戦してみようかという話も進んでいるところです。

「LOVE」 作:TOMOKO
最後に、これからの活動への思いを聞かせてください。

率直に、もっと沢山の方に知っていただきたいという思いがあります。今後もこの世界で生きていくために、今後も展示を重ね表現を続けていきたいです。

また、アートの世界に突然飛び込んだので知らないこともたくさんあります。だからこそ、そうした経験や気づきを共有し合える画家仲間と出会えたら嬉しいですし、応援してくださる方の存在があれば、まだ頑張れると思える原動力になります。これからも人とのつながりを大切にしながら、表現を深めていきたいと思っています。

喪失感の中で自分と向き合い、絵を描くことに辿り着いたTOMOKO氏。グランマ・モーゼスの生き方に背中を押され、自動書記的な制作と金色の光の表現で、癒しと前向きなエネルギーを届けている。表現のスケールを広げ、新たな挑戦を重ねる今後の活躍に期待が高まる。

インタビュー: 2025/12/21